開催レポート

ITリーダーが目指すべきは、デジタル社会の立役者だ

「企業は今大きな転換点を迎えつつある。ITリーダーはこの転機を勝機に変えなければならない。その答えの1つがここにある──」
2019年11月12日(火)~11月14日(木)の3日間、東京・港区のグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて、『Gartner IT Symposium/Xpo 2019』が開催された。テーマは「デジタル社会をリードする」である。
あらゆる世界に浸透したテクノロジ。人工知能 (AI) やクラウド・コンピューティングの普及、それに伴って高まるプライバシーやセキュリティの脅威に、CIOをはじめとするITリーダーは立ち向かわなければならない。
多くの人やモノがデジタルでつながっている今、新たなテクノロジによって不可能が可能になりつつあり、推進する側の倫理が問われ始め、ITリーダーは、「何ができるか」ではなく「なぜそうするのか」も問わなくてはいけない時代になった。
ITリーダーが変革をリードしつつ、なおかつ好ましいデジタル社会の担い手となるにはどうしたらよいのか。
その答えに深い示唆を与えた、初日のオープニング基調講演を紹介する。

「デジタル化の均衡点」を求めてデジタル社会で打ち勝とう

ガートナー カスタマー・エクスペリエンス & テクノロジ サミット 2019

リー・ウェルドン
マネージング バイスプレジデント

「ITリーダーは、地政学的シフト、経済的シフト、巨大デジタル企業の台頭という3つの転機に対処しなければならない──」
初日のオープニング基調講演のテーマは「『転機』を『勝機』に変える: デジタル社会におけるリーダーシップ」。最初に登壇したのは、マネージング バイスプレジデントのリー・ウェルドンである。

ウェルドンは、デジタル社会で打ち勝つための一つの道しるべとして、「TechQuilibrium=テクウィリブリアム(デジタル化の均衡点)」の言葉を示した。これは「Technology(テクノロジ)」と「Equilibrium(均衡)」の言葉を合わせたガートナーの造語で、デジタル化の技術的な均衡点のことを指す。

ITリーダーは経営層と連携して、既存ビジネスとデジタル・ビジネスのバランスを取りながら、顧客への価値を提供していく。そこで生まれた既存ビジネスとデジタル・ビジネスの均衡点こそがテクウィリブリアムであり、この均衡点は業界はもちろん、各企業によっても異なってくるという。

ガートナーが行った2020年CIOサーベイでは、全業界の平均で見ると、デジタルに由来する製品/サービス/売り上げはわずか20%で、デジタル・テクノロジで強化された社内のワークプレース/プロセス/サプライチェーンは39%だった。ところが、先進企業では顧客価値の3分の1がデジタルに関わっており、業務運営の半分以上がデジタル化されているという。

ウェルドンは、デジタル化の均衡点の実現のために、ITリーダーが特に意識すべきことは、「意思決定」「リーダーシップ」「カスタマー・エクスペリエンス」「デジタル社会」の4つだと指摘した。
ウェルドンはまず、「意思決定」に言及。複雑で重いデータはAIなどのテクノロジで自動化され、解釈と意思決定は人間が補強する役割を担うようになるとし、「2022年までに、従業員の40%は、意思決定のサポートとしてAIエージェントを活用する」というガートナーの予測を紹介した。

攻めに打って出てデジタル施策のリーダーになろう

足立 祐子

足立 祐子
ディスティングイッシュト バイスプレジデント, アナリスト

「リーダーシップ」について述べたのは、ディスティングイッシュト バイスプレジデントの足立 祐子だ。
足立は、IT部門は長きに渡り「御用聞き」に徹してきたが、今後5年間で巨大デジタル企業が自社のビジネスに重大なインパクトをもたらすと考える経営層は83%に達していると指摘した。さらに、53%がデジタル施策を最重要課題と位置付けていることも紹介した。他方、経営層がCIOを「信頼できる仲間」と認識しているのは18%のみで、CIO自身の自己評価も受動的で守りに徹する傾向がある事実を示した。「今こそ変わろう」と語りかけ、CIOは攻めに打って出るために次の3つの柱を実行することが大事だと説いた。

1つ目は、「攻めのリーダーシップ・ポジションに転換する」こと。トルコのメガバンクを例に挙げながら、ビジネス部門との協業によりITリソースへのアクセスに関する適切な条件を定めることを説いた。ビジネス部門とIT部門が対等パートナーとなる将来像を示した。

2つ目は「攻めのチームを強化すること」。ITとビジネスの専門家から成る「フュージョン・チーム」を作ることを推奨した。
3つ目は、「取締役とのコミュニケーションで加点を得る」こと。ITリーダーは、経営層が興味をもつように、売上・コスト・リスクの観点で会話し、デジタル・ビジネスに欠かせない人物として振る舞うことが重要だと述べた。

エクスペリエンスに命を吹き込め

本好 宏次

本好 宏次
バイスプレジデント, アナリスト

CIOが取り組むべき2つ目の「カスタマー・エクスペリエンス」について語ったのは、バイスプレジデントの本好 宏次だ。
近年、さまざまなテクノロジの普及やIoTなどの発展によって、相反することを同時に求めるわがままな顧客である「エブリシング・カスタマー」が増えている。例えば、アプリケーションの機能の「全部入り」を求めると当時に、手間なく使える操作性を求めるといった具合だ。

その一方で、テクノロジで顧客ニーズに応え続けると、逆に顧客に疎外感を与えてしまう。このギャップを埋めるためには、テクノロジが顧客に価値を生むようにエクスペリエンスを適切にデザインし、なおかつエブリシング・カスタマーを満足させる必要がある。
そのためにガートナーが推奨しているのが「マルチエクスペリエンス・プラットフォーム」。これは、エクスペリエンスに命を吹き込むテクノロジ・プラットフォームのことで、あらゆるタッチポイントを使って一貫性のあるエクスペリエンスを提供するものだ。

本好はあるピザ店が15もの方法で注文を受けられる例を示しながら、マルチエクスペリエンス・プラットフォームが成功するカギとして、「人材とプロセスへの投資」と「顧客の期待を上回ること」の2つを挙げた。2021年までに3分の1の企業は、マルチエクスペリエンス開発プラットフォームを導入するという予測を紹介した。

新ルール策定し社会的問題の解決に貢献する

デーブ・アロン

デーブ・アロン
ディスティングイッシュト バイスプレジデント, アナリスト

「デジタル社会ではこれまでのルールはもはや通用しない──」
4つ目の「デジタル社会」について語ったのは、ディスティングイッシュト バイスプレジデント、 アナリストのデーブ・アロンだ。

人、モノ、企業がテクノロジでつながるデジタル社会では、従来のベスト・プラクティスはもはや有効ではない。デジタル社会は成長の原動力であると同時に、新たな脅威を生み出す側面も持つ。すでに全世界で年間セキュリティ支出額は13兆円以上にもなり、2022年までに企業の30%は、ビジネス・ユーザーの信頼を高めるために、説明可能なAIを採用するようになると展望した。

デジタル社会ではプライバシーの確保はこれまで以上に困難になる。データの価値と責任ある利用とのバランスを取るためには、「適切な情報ガバナンス」「共有メリットを感じられるような真の価値提供」「信頼を得るための透明性とコントロール向上」の3つが必要だとした。

また、もう1つの成長の原動力として、「社会への価値提案」を挙げた。70%のステークホルダーが企業が自社ビジネスに関わる社会問題への立場を公言することを望んでいると指摘し、各業界が抱えるさまざまな社会的問題の解決がビジネス・チャンスになると力説した。

ある運送会社は荷物の配送を通じて、孤独死の防止、行政事務の効率化、地域経済・物流の活性化などに貢献していることを示し、「社会への価値提案」と「顧客への価値提案」の両立の重要性を説いた。
最後に、デジタル社会は転機だが、それを勝機と捉えてポジティブな未来とつくろうと力強く呼びかけた。

 

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