よりよいパートナーシップを構築し、デジタル時代を駆け抜けよ

「現在の委託先パートナーに本当に満足しているだろうか──」
2019年8月30日(金)、東京カンファレンスセンター品川にて『ガートナー ITソーシング、プロキュアメント、ベンダー&アセット・マネジメント サミット』が開催された。テーマは「デジタル時代のパートナー戦略を構築せよ」だ。

平成30年間の歴史は、企業がアウトソーシング戦略を打ってきた変遷でもあり、それによりITの効率化やコスト削減などに一定の成果を挙げてきた。しかし、パートナーとの関係改善に苦慮するIT部門はいまだに少なくなく、人材不足の慢性化や弱体化といった課題も残る。トレンド変化がさらに激しいデジタル時代では、一層、適切な調達手段で、最適なパートナーを見つけ出すことが求められる。

ここでは、デジタル時代の新たなパートナー戦略の構築に向けて、ITリーダーが押さえるべき施策を探求した3つの講演を紹介する。

社外の能力を最大限活用し、デジタル時代を成長せよ

ガートナー  ITソーシング、プロキュアメント、ベンダー & アセット・マネジメント サミット 2019

中尾 晃政
プリンシパル, アナリスト

「IT戦略上、委託先パートナーを重要な存在としているのは85%。にもかかわらず、パートナーに満足しているのは42%しかない。デジタル時代の成長のカギの1つは、このギャップをいかに埋められるかだ──」
オープニング基調講演に登壇したのは、本サミットのチェアを務めたプリンシパル, アナリストの中尾 晃政。テーマは「デジタル時代のパートナー戦略を構築せよ」である。

中尾は、パートナーの問題は古くて新しい課題だとし、平成30年間のパートナー関係を振り返った。パートナーとの関係には、経営環境の変化や技術の進化が影響していること、トレンドの予兆は隆盛する5、6年前にすでに発現していることなどを指摘した。また、これまでのパートナー活用の目的は「効率化」「余力創出」などリソース補完が大勢を占めていたが、アウトソーシングによってIT部門の人材不足は解消されていないとし、IT部門は、限られたリソースを前提に最適なソーシング・オプションを選択し、社外の能力を最大限活用する施策を強化する必要あると述べた。

そして、デジタル時代のパートナーシップ構築の勘所として、3つのポイントを取り上げた。1つはIT部門の価値提案。デジタル・トランス・フォーメーションへの姿勢を明確にし、シャドーITへの対処、選定・評価・交渉業務の無駄を排除するなどしてIT部門機能のスピードと柔軟性を向上させることを提案。さらに、デジタル時代のパートナーシップ構築に必要なバイモーダルなソーシング戦略とベンダー管理の要諦として5つのポイントを紹介した。
2つ目は、多彩なソーシング・オプションの適用。従来の運用・保守、設計・開発・実装だけでなく、「戦略・立案」という上流から多彩なリソースを協創させる場を設けるべきだと力説した。さらに、ギグ・エコノミー(個人)やテック・ベンチャー、地方ITベンダー、クラウド・ベンダーなど多彩なパートナーと組む可能性を追求しようと呼びかけた。
3つ目は、契約交渉力の強化。契約交渉はベンダー管理の一丁目一番地だとし、トラブルを見越した抑止・軽減策の事前合意や見積もり根拠の可視化といった取り組みのほか、「改正民法」への対応や、「クラウド・ファースト」を前提とした契約交渉に備えることも必要だと語った。

明確なゴール設定と一貫性で組織と人材を再構築へ

ガートナー  ITソーシング、プロキュアメント、ベンダー & アセット・マネジメント サミット 2019

足立 祐子
ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリスト

「I&Tオペレーティング・モデルを利用したIT組織と人材の再構築」をテーマに講演したのは、ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリストの足立 祐子だ。
足立は冒頭、顔は非常に詳細に描かれているものの、胴体がラフに描かれたアンバランスな馬の絵を見せ、IT組織の戦略は細かく描いていているにもかかわらず、人の評価やキャリアパスなどは大雑把なケースが多い。バランスよく描くことが肝要だと述べた。

これからのIT組織に影響与える組織と人材の潮流として、次の3つを挙げた。1つは、プロダクト・マネジメント・アプローチ。従来の縦割りの分散型IT組織ではなく、その欠点を補った集中型ITでもない、各プロジェクトごとに組織を編成する「ビジネス成果追求型IT」のことである。
しかし、この方法では組織を大きく変える必要があり、それを補うために2つ目のポイントとして、コミュニティ的な組織運営を推奨した。縦軸に自立的な意思決定権をもつスクワッド、横軸に従来のマネージャー機能に近いコーチを配置した組織運営に、同一分野やトピックに関心をもつコミュニティのギルドを加えた運営組織だ。ただ、これも多くの組織を必要としてしまうことから、それを乗り越える3つ目のポイントとして、個人ネットワークスポット調達などを行うダイナミック・ソーシングを推奨した。

次に、冒頭の馬の絵のようにならいためとして、ITオペレーティング・モデルの9要素を示し、その作成のポイントを挙げた。1つは、ゴール(なりたい姿)を4つに分けて考えること。陸上選手でも長距離と短距離では身体のつくりもトレーニングのしかたも異なることから、組織の筋肉をどうつくるのかを決める必要があると説き、それを決めたら、一貫性を保つことによってIT組織が機能しはじめると述べた。
ただし、9の要素すべてが決まらないうちに動き出すと、再び冒頭の馬の絵に戻ってしまうため、動きはじめるときは9要素すべて決まったあとにするべきだと強調した。

ITコスト最適化に役立つ「TGR」と「TIME」

ガートナー  ITソーシング、プロキュアメント、ベンダー & アセット・マネジメント サミット 2019

片山 博之
シニア ディレクター, アナリスト

「ITコスト削減だけがコスト最適化ではない。浮いたコストを使って将来の成長への投資を行うのがITコスト最適化である──」
「デジタル時代のITコスト最適化」をテーマに講演を行ったのが、シニア ディレクター, アナリストの片山 博之だ。

片山はまず、ITコストの可視化について述べた。利用部門や経営者に、IT部門が管理するITコスト区分を見せても理解されないとし、各ステークホルダーが理解できるIT関連コスト区分として、製品・サービス別IT費目などの「IT部門」、自身が利用するシステムやサービスのコストの「利用部門」、ビジネス目的別支出割合などの「経営者」の3つを推奨した。
可視化は、①「IT」の定義の明確化、②CAPEX、OPEXの内訳の明確化、③「システム」を定義してシステム・コストの構造を理解すること、④運用作業コストを割り振る、⑤ほかの共用領域もチャージバックの基準を使って割り振る、の5つのステップが大事だと説いた。

次にIT支出の最適化について述べ、「変革(T:Transform)」「成長(G:Grow)」「運営:(R:Run)」で分類するTGRモデルを示した。変革とはまだ見ぬ変革を実現する部分、成長は既存ビジネスの拡張、運営は税金のように払わなければいけないコストで、できるだけ小さくしたい部分のことだ。変革は、「準備段階」「POC(概念実証)」「プロトタイプ」などとフェーズごとに予算を決め、想定成果範囲に応じた見積りと予算設定を行うべきだとした。

最後に述べたのは、既存システムを効率的に棚卸する方法。それに役立つフレームワークとして「TIME」を紹介。縦軸にリスク、横軸にシステム価値/業務適合性をとって、「許容(T:Tolerate)」「投資(I:Invest)」「廃棄(E:Eliminate)」「移行(M:Migrate)」の4つでシステム資産を評価するものだ。さまざまな方面から情報を集めて3段階で評価して、資産を位置付けていく。これにより既存システムの無駄を排除してコスト最適化が実現できるとし、ITコスト最適化は企業全体の戦略の要であり継続施策であると述べ、絶えず評価して最適化を実行しようと呼びかけた。

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