未来志向2030:新たな時代へ

「これまで先進だったテクノロジは幻滅期に入りつつある。しかし、ミスリードしてはならない。幻滅期とはお祭り状態の終わりを意味する。すなわち、これからが本番である。行動を起こせるか否かで企業の未来は大きく変わる──」
2019年4月23日(火)-25日(木)の3日間、東京・港区にある八芳園で、「ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019」が、「未来志向2030:新たな時代へ」をテーマに開催された。

2030年に向け、テクノロジはさらに進化するが、これからの時代、テクノロジを駆使できる企業とそうでない企業に分かれる。前者は競争優位性がさらに増し、後者は企業そのものが破壊される可能性がある。新たな時代の幕開けを目の前にし、過去の延長ではなく、新たな世界(New World)を描き、そのビジョンに向けて新たなスキル、マインド、カルチャー、スタイルを含む実行能力の獲得を加速する必要がある。
ITリーダーの採るべき戦略、アクションとアドバイスを提示した、4つの講演を紹介する。

新しいスタイルを獲得し、チェンジ・リーダーを目指そう

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

亦賀 忠明
ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリスト

「AIやIoTなどをバラバラに捉えるだけでなく、融合したらどんなサービスが提供できるかを考えるべきだ──」
初日の基調講演に登壇したのは、ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリストの亦賀 忠明。テーマは「新しい時代へ」である。

亦賀は、企業のITは、メインフレーム、オープン、クラウドと移行していったが、その基本はコスト削減と業務システムの維持にあったと指摘。しかし、2030年頃から突入するメッシュの時代は、従来の引っ越しの方法では対応できず、新築を考える必要がある。これまでとは、まったく違う世界である「New World」の構築が必要だと語った。

そのためには、未来を想像することの重要性を説き、2030年を想像しようと語りかけ、すべてがモード2になっていること、大量デバイスなどのテクノロジを組み合わせたときのインパクトの強さ、クラウドやAIが当たり前になった世界、量子コンピュータが現実のものになった未来などを頭に入れておくべきだとした。

ただし、テクノロジはスキルがなければ単なるモノでしかないとし、AIやクラウドも「導入」という発想だけでなく、「人」をプラスすることで初めてリターンが得られるため、人材に投資するべきだと主張。ディープラーニングなどを学ぶ機会の敷居はかつてなく低くなっているため、自ら学習し、テクノロジの「自分で運転」を速やかに開始すべきだとした。

そして、亦賀が最も強調したのが「新しいスタイル(芸風)」の見直し。「依存型の作業から自立したクリエイターになる」「外部を業者ではなくパートナーとして捉える」など複数の芸風を獲得することで、新たなエンジニアや組織をつくり、デジタルが当たり前になる時代に対応していこうと語った。
最後に、新しい芸風の獲得を楽しみ、リーダーは「チェンジ・リーダー」になることを自覚し、継続的にすべてを改善していこうと呼びかけた。

この改善には長い時間がかかるが、取り組まなければ企業そのものの死活問題にもなり得るため、企業経営者は、企業や組織のリテラシー、スキル、マインド、スタイル(芸風)の変革について5年、10年をかけてでも取り組むべき最重要テーマに設定し、企業として推進すべきという主張も展開した。

スマート化に欠かせない「デジタル・ツイン」と「5G」

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

池田 武史
バイス プレジデント, アナリスト

初日、「スマート化:IoTの新たなメガトレンド」をテーマに講演したのは、バイス プレジデント, アナリストの池田 武史である。
池田は、スマート化とはサービスやビジネスがこれまでより賢くなることだと指摘。センシングやネットワークによってモノやその周辺環境を把握し、過去や類似した環境から学んだ予測から、よりよい選択や提案をタイミングよく自発的に提供することで、賢くすることができると述べた。

サプライチェーンやプロダクト・マネジメントのほか、公共交通や環境/エネルギーなどの分野、さらに、車などの手段ではなく「移動」にフォーカスしたスマート・モビリティなどが、スマート化の対象になると語った。
ただし、スマート化のチャレンジは、既存の業界団体によって新たな取り組みが阻害されたり、一部の企業による独占が進み公正な競争が妨げられるなどの可能性があるため、方向性を見失ってしまうこともあるが、そのソリューションで誰が喜ぶのかをしっかりと定めることが、方向性をブラさないコツだと述べた。

スマート化を支えるテクノロジとしてまず取り上げたのがデジタル・ツイン。現実のモノやシステムのレプリカをデジタル上に表現するもので、過去の蓄積データから不具合の原因を早期に特定できるアプリケーションの開発などが容易になり、今後、精度と粒度がさらに向上することで、組織などにも応用できるようになると指摘した。

もう1つのテクノロジとして5Gを紹介。通信速度が速くなるだけでなく、無線でさまざまな映像が瞬時で手に入るようになったり、遅延がないことで遠隔医療がスムーズになるなどのメリットがあるとした。遮蔽物があると遠くに飛ばないなどのデメリットもあるため、過度な期待は禁物としながらも、IoTの取り組みを加速させる重要なテクノロジなため、IoTの取り組みでは5Gを必ず評価対象にすべきだと語った。

ITインフラストラクチャの未来に欠かせない4つの柱

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

デイヴィッド・カプッチオ
ディスティングイッシュト
バイス プレジデント, アナリスト

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

トーマス・ビットマン
ディスティングイッシュト
バイス プレジデント, アナリスト

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

ミリンド・ゴーヴァカー
バイス プレジデント, アナリスト

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

デイヴィッド・カプッチオ
ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリスト

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

トーマス・ビットマン
ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリスト

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

ミリンド・ゴーヴァカー
バイス プレジデント, アナリスト

2日目の基調講演に登場したのは、デイヴィッド・カプッチオ、トーマス・ビットマン、ミリンド・ゴーヴァカーの3名だ。テーマは「ITインフラストラクチャの未来:Always On、Always Available、 Everywhere」である。3名は次の4つの柱について述べた。

1つは、「多様性を通じて俊敏性を高める」こと。かつてはデータセンターがすべてを制御していたが、ビジネス側からは俊敏性がないと指摘され、なおかつ、ビジネスはITの統制外でさまざまなツールなどを使っており、カオスな状態へと大きく変貌している。この状況では、短期的にはカオスに秩序を与えることが、長期的にはプロジェクトよりもプロダクトを重視することが重要である。ビジネスは新しいソリューションを探していることから、デジタル・ツールボックスを用意することを推奨し、どこにでもインフラストラクチャがある状態にすることで、グローバルな展開を可能にするべきだとした。

2つ目に「アプリケーションが変化を可能にする」ことに言及。無限なリソースツールがあるなか、I&Oはサービスとプロダクトを提供すべきであり、オートメーションによって俊敏性をもたらし、変化に備えたケイパビリティをどう構築するかを考えるべきだと指摘した。

3つ目は「境界が変わりつつある」こと。2022年までに企業で生成されるデータの50%以上はデータセンターの外部またはクラウドで作成/処理されるとし、エッジ・コンピューティングによってインフラストラクチャはあらゆる場所に存在するようになると語った。

4つ目は「人材が要」。新しいインフラストラクチャに対応するには、新しい役割を持った人材が必要だが、成功している企業は「ビジネスにフォーカスしたコンピテンシ」「動的なキャリア向上」など4つのポイントで人材を獲得していることを紹介。変化を管理するのではなく、変化や破壊を主導する側になるべきだと強調した。

エンドユーザー・コンピューティング戦略を近代化せよ

ガートナー  ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2019

クリス・シルバ
バイス プレジデント, アナリスト

「ユニファイド・エンドポイント管理(UEM)はすぐには成功するわけではない。しかし、いずれはほとんどの企業で採用するはずだ」
2日目の午後に登場したのは、「2020年以降を見据えたエンドポイント戦略の策定」をテーマにしたバイス プレジデント, アナリストのクリス・シルバである。シルバは、イノベーションを推進するIT部門に、次の3つの抜本的な変革を求めた。

1つは「プロダクトへの変革」。現在、IoTなど、スマートフォン以外にさまざまなエンドポイントが存在するが、シルバはこれらは大きな影響を与えるわけではなく、永続的なメリットを提供する変革ではないと指摘。IT部門は、プロジェクト・ベースの考え方から脱却し、プロダクト・ベースの考え方に移行することで急速な変化に対応できるようになると述べた。
シルバはワークスペース・プロダクトへの移行を求め、それぞれのユーザーに適したものを提供することで永続性ができるとした。ワークスペースには、ハードウェアの枠を超えた思考が必要で、それにより、ユーザーに対して一貫したサポートと柔軟性が生まれると力説した。

2つ目は、「スケール可能なデリバリ・プロセスの適応」。プロセス、ツール、範囲を近代化することが大事だと語り、統合の出発点としてUEMを推奨し、1つのコンソールであらゆることが見渡せるようになると語った。

3つ目が、「人材採用、再トレーニング、コアの刷新」。多くのI&Oチームがスキル不足を経験するとし、エンドユーザー・コンピューティング領域を超えてステークホルダを採用するだけでなく、社内で育成することも視野に入れるべきだとした。最後に、エンドユーザー・コンピューティング戦略の近代化に向けた行動計画を示し、講演を締めくくった。

 

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