開催レポート

昨日の敵は明日の友。エコシステム時代に欠かせない新発想

ガートナー ビジネス・インテリジェンス、アナリティクス & 情報活用 サミット2016

2016年10月5日(水)~7日(金)の3日間、東京都品川区のグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールで『Gartner Symposium/ITxpo 2016』が開催された。
テーマは『Lead 360 : デジタルをコアに据えよ』である。

かつてないスピードで競争環境が変化するデジタル時代には、あらゆるプロセス、製品、サービスのコア(中核)にデジタルを据え、イノベーションを起こす必要がある。従来型の「先だけを見て計画する」戦略はもはや有効ではない。
居心地のいい安全圏から抜け出してデジタル・イノベーションをもたらすには、視野を広げ、360度にわたって未来を見渡し、変革をリードする力が必須だ。

シンポジウムでは数多くのセッションや講演が行われたが、ここでは、「デジタル社会のプラットフォームを構築する」をテーマにしたオープニング基調講演を紹介する。

エコシステムの土台となるデジタル・プラットフォーム

ガートナー ビジネス・インテリジェンス、アナリティクス & 情報活用 サミット2016

「エコシステムこそがデジタルの未来であり、デジタル・プラットフォームである──」
最初に登壇したのは、シニア バイス プレジデントのピーター・ソンダーガードだ。

ソンダーガードが語ったのは、エコシステムに欠かせないデジタルプラットフォームである。デジタル・プラットフォームの構成要素は、ITシステム、カスタマー・エクスペリエンス、モノ、インテリジェンス、エコシステムと指摘。ITシステムについては、従来のアプリケーションの整理やデータセンターの統合などを行って旧式テクノロジを廃止し、クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグ・データなどの新興トレンドを取り込んで刷新すべきと提言。

カスタマー・エクスペリエンスでは高度なアルゴリズムを用いてカスタマーがあっと驚くような体験を提供することがカギになると語り、モノについては今後、IoT(モノのインターネット)推進にあたって統合とセキュリティの課題が顕在すると警鐘を鳴らした。さらにインテリジェンスの重要要素としてはAI(人工知能)があり、新規システムへの適用のみならず、既存システムでの活用にも目を向けるべきだと説いた。

そして、新しいデジタル・プラットフォームは、進化し続ける官、民のエコシステムに参加するための土台になるものであり、今後グローバル規模で競争するためにはエコシステムへの参加は不可欠だと提言。CIOのなかには、エコシステムのパートナーを短期間で2倍に増やす計画をもっている例もあることを紹介し、そのために欠かせないこととしてAPIの提供をあげた。
「グローバル企業はすでにAPIを提供し、パートナーや開発者とつながっている。APIは単に技術的な用語として理解するのではなく、人間の脳のシナプスのように、APIも将来のビジネスの必須要素として捉えるべきだ」と述べ、「APIを通じたエコシステムの取り組みに着手していないなら今すぐスタートしよう」と呼びかけた。

デジタル・プラットフォーム構築に欠かせない「初心者の心」

ガートナー ビジネス・インテリジェンス、アナリティクス & 情報活用 サミット2016

続いて登壇したのは、バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローのハン・ルホンとマーク・ラスキーノだ。2人が語ったのは「デジタル・プラットフォーム構築には何が必要か」という点についてである。

冒頭でまず、CIOの仕事は現実的には既存システムの保守・管理だが、核心に置くべきものはビルダー、すなわち新たな仕組みの「作り手」という意識であり、ビルダーとして、デジタル・プラットフォームを作るという重要な役割をもっていると語った。そして、その際にはテクノロジよりもビジネスモデルの構築を念頭に置くべきであり、今はコスト最適化のみではなくビジネス価値の最適化へと考え方が変わってきていると指摘した。

ガートナー ビジネス・インテリジェンス、アナリティクス & 情報活用 サミット2016

デジタル・プラットフォーム構築に必要なこととして、まずバイモーダル戦略の採用を推奨した。すでに40%以上の企業がバイモーダル戦略を採用しており、具体的には予測可能性と信頼性を重視するモード1、俊敏性とスピードを重視し実験的モード2の双方のモードの併用が主流になりつつあると述べた。そして、新しい未来を作るためにはこれまでの経験、つまり「専門家の技」を踏まえつつ、同時に全く新たな発想で思考する必要があると語った。すなわち、「専門家の技」と「初心者の心」を同時に兼ね備えることが肝要だと力を込めた。
「初心者の心」を育てるためには多様なメンバーでチームを編成するべきだとし、ときにはライバル同士を一つのチームに入れることも視野に入れるべきだと主張、多様性が新しい発想を生み出すと述べた。

しかし、新たな発想が重要である一方で、まったくのゼロからデジタル・プラットフォームを構想する必要はなく、他業界で進んでいるブロックチェーンやIoT家電など、すでに先行している事例や手法の模倣からはじめることも有意義であると説いた。2人はまとめとして、そうした取り組みを通じてパワフルなエコシステムを構築し、自社のAPIを開放し、他社のAPIも活用することを求めた。

エコシステムで農業の未来が変わる

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次に登壇したのはバイス プレジデントの鈴木 雅喜である。鈴木はエコシステムの具体例を紹介した。

まず取り上げたのは農業改革。世界規模で考えると、20年ごとに10億人分の食糧を新たに用意しないといけないが、その解決方法の一つとしてエコシステムがあると指摘。
トラクターにセンサーを付け、さらに部品メーカー、ディーラー、メンテナンス業者などをネットワークでつなぐことで、トラクターの燃料を抑えたり故障を防止したりすることが可能となる。さらに、種や肥料の供給業者とも連携してエコシステムを構築し、人工衛星のデーや気象情報を分析することで、種を蒔いたり肥料や水を与えたりするタイミングについても最適解が求められると説明。
また先物取引に関するエコシステムを構築すれば、農家は科学的なデータによって作物をいつ、どのように出荷すべきか判断できるようになると述べ、収穫高や機器の稼働率の向上、農家の収益の最大化につながると言及。すでにこのようなエコシステムが動き始めており、8~12%の収穫高の向上をもたらしており、将来的には25%まで上がるとした。

また、高齢化社会の問題解決でもエコシステムは有効だと説明し、医療サービスと組み合わせた高齢者向け住宅、センサーによる身体の状態のモニタリング、さらにはロボットを遠隔操作して手術を行う可能性もあることを紹介した。
「高度にデジタル化されたエコシステムに乗り遅れることは、新たな機会を見逃すことになる。高齢者でも自動運転によってスポーツカーでハイウェイを駆け抜けたい、そんな一人一人の思いを受け止め、これまでにない付加価値を提供することを目指そう」と語りかけた。

今までの敵とも手を組む「フレネミー」という発想がエコシステム構築のカギ

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最後に再びピーター・ソンダーガードが登場した。
ソンダーガードは、今、多くの企業は、Amazon、Apple、Gooleといった巨大なデジタル企業の仲間として、それらのエコシステムに参画するのか、それとも独自のエコシステムを構築して戦うのかという、厳しい選択を迫られていると指摘。エコシステムのなかで、自社がどのような役割を担うのかを考えるべきだと語った。

役割は大きく3つ考えられ、一つは自らドライバーとなり、エコシステムの設計と運営をけん引するリーダー。もう一つは複数の会社と手を組み、商品やサービスの供給者と購入者を集めて業界を変革するプラットフォームを構築することで、皆が勝者となるマーケットメーカー。最後が共通の目的に向かって友好的かつ対等に貢献し、一緒に働くパートナーであると述べた。
そして、エコシステム時代における重要なキーワードとして「frenemies(フレネミー)」を紹介。これは「friends(友達)」と「enemies(敵)」を合わせた造語で、エコシステムには従来には考えられなかったような相手とのコラボレーションが欠かせない、そのためにはこれまでは敵だった企業とも手を組むことが必要になると力説。世界で50以上の大手金融機関が手を組んでブロックチェーン技術を開発している例をあげ、それまで激しく競争を繰り広げていた企業とも協業することで、新しいインフラを作ることができると語った。

最後に、「自覚すべきは、私たちは新たな文明のインフラを構築していることだ。私たちの子ども、さらにはその子どもたちが大きく繁栄していくための文明のインフラをビルダーとして作り上げていこう」と力強く締めくくった。

Gartner Symposium/ITxpo 2016
Lead 360 : デジタルをコアに据えよ
2016年 10月5日(水)・7日(金)  グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール

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