開催レポート

デジタル・ビジネス実現に欠かせない新時代のソーシング&ベンダー管理

ガートナー ソーシング & 戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017

2017年6月5日(月)- 6日(火)の2日間、『ガートナー ソーシング&戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017』が開催された。テーマは「ソーシング&ベンダー管理をデジタル・ビジネスのコアに据えよ」である。

デジタル・ビジネス実現へ向けた変革の波が訪れているなか、ITリーダーは、デジタル・ビジネスの成否を左右する影響力を持っている。
本サミットでは、デジタル・ビジネスの実現を見据え、多様なソーシング活動の効果をさらに高めるための方策を探り、ITベンダーの活用法、ベンダーとの契約、IT投資管理といった普遍的な課題に加え、新たに、IT人材やスキルといった観点も含め、最新のトピックを国内外のアナリストが解説した。
ここではITリーダーに深い示唆を与えた、2日目の4つの講演を紹介する。

競争優位の確保に欠かせないバイモーダル・ソーシング

ガートナー ソーシング & 戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017

「IT戦略とソーシング活動は、業務効率化だけではなく、収益計画に直結させるべきだ──」
オープニング基調講演では、リサーチ ディレクターの海老名 剛が「ソーシング&ベンダー管理をデジタル・ビジネスのコアに据えよ」をテーマに登壇した。

海老名は、現在、年商1兆円以上の大企業の90%がデジタル・ビジネスを実施中か検討中であることに言及し、今、デジタル・ビジネスを検討できない企業は、今後の競争に生き残れないリスクを負うと述べた。その上で、ビジネスを安定させながら競争優位を確保するために、バイモーダル・ソーシングを推奨した。既存のビジネスに立脚した取り組みがモード1、既存のビジネスに立脚しない革新性に富んだものがモード2で、2つのモードをお互いに密接に関係させながらシナジーを生かすことが肝要だと述べた。

バイモーダル・ソーシングの大きな課題の1つは、デジタル・テクノロジをはじめとするIT活用が収益計画に直結しており、その期待に沿うIT戦略が求められている点だと語った。ビジネス戦略のあとにIT戦略を策定する従来の方法から、ビジネス戦略にIT戦略が組み込まれるようになるとし、ビジネス戦略とIT戦略を策定するプロセス間でのフィードバックを密にすることから始めようと述べた。

また、2020年までに、デジタル・テクノロジを駆使した新しいビジネスモデルの構築を初めて試みる日本企業のIT部門の7割近くが、予算上の問題によって成果を出せないとするガートナーの展望を紹介。デジタル・ビジネス投資は変革のための投資として位置づけられるべき、と語り、社内全体への啓蒙活動、フェーズごとの予算設定、プロトタイプはスモール・スタートから始めるべきなどと述べた。

その他3つの課題についても具体的なアクションを紹介した。デジタル・ビジネスに貢献するためにITリーダーがするべきこととして、「モード2組織を編成し、モード1組織との関係を整理して人材構成を再考しよう」など、7つの行動を求めた。

IT戦略計画を経営戦略と連携させよう

ガートナー ソーシング & 戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017

「IT戦略策定の新しいフレームワーク:デジタル・エコシステムの時代に必要なIT戦略」をテーマに講演したのは、バイス プレジデントの松原 榮一。デジタル化を前提としたIT戦略策定の新しいフレームワークについて語った。

松原は2008年と2016年のIT戦略を比較し、ITの役割と重要性の増大によって大きく変化していると指摘し、Uberに代表されるように、デジタル化によってビジネスが破壊的な影響を受ける可能性もあり、IT戦略をビジネス戦略に組み込まないとビジネス計画が成り立たないと述べた。しかし、売り上げや利益目標はあっても、自社に本当のビジネス戦略がある企業はまだ少ないため、ビジネス戦略の有無を確認するためのチェックリストを示し、ビジネス戦略を明確にすべきだと強調した。

松原はTreacyのナンバーワン企業の法則として、「1.顧客との親密性」「2.業務運営の卓越性」「3.商品の優位戦略」の3つがあり、1はAmazon 、2はWalmart、3はAppleが代表的な例で、3つを同時に目指す企業は成功せず、どれか1つに卓越する企業が勝者になれると語った。

新しいIT戦略とIT戦略計画として、戦略的プランニングの視点を推奨。長期的、中期的、短期的の3つのプランニングを紹介したあと、戦略的プランニングのワークフレームを提示。インプット(戦略)から、戦略的プランニング、アウトプット(戦略計画)までの流れを説明し、今のIT戦略計画が、経営戦略と連携しているのかを確認できるチェックリストを示した。経営戦略から展開されたビジネス施策と、IT戦略が連携していない場合は、ビジネス部門と協働してIT戦略を見直そうと呼びかけた。

ITコストの無駄をなくし、価値の高いシステムに投資すべし

ガートナー ソーシング & 戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017

「コストの見える化ができないと何も始まらない──」
「ITコスト最適化の失敗≒存在感のないIT部門」のテーマで登壇したのは、リサーチ ディレクターの片山 博之だ。

片山は、ITコストの無駄をなくして価値の高いシステムに投資することが肝要だと語り、そのためにはコストの見える化が大きなカギだと指摘した。見える化するものとして、「ITの定義」「シャドーIT」「IT部門目線の分類」「ビジネス部門目線の分類」をあげ、無駄なコスト領域を発見し、調達の最適化、システムや組織の集約化、低価な代替手段、標準化・自動化・平準化、変動費化などによってコストを削減しようと述べた。

シャドーITは、中央IT部門がすべてを集中管理する「集中型」の企業でも増えており、特に各子会社ですべてのITを個別管理している「分散型」の場合は多くのシャドーITが存在する。「安全性と効率性」と「スピードと効果」のバランスを取りながら、シャドーITを適切に管理することが重要だと述べた。

そして、稼働中システムの資産評価のフレームワークとして、Tolerate:許容、Invest:投資、Migrate:移行、Eliminate:廃棄の略の「TIME」を紹介。システム価値とコストとリスクを評価軸にし、システム・コスト、運用・保守リスク、テクノロジ・リスクそれぞれに対して3段階の評価をすることを勧め、これを実現するには、IT部門とビジネス部門をつなぐ人材が欠かせないと強調した。

「変革」の投資ともいえるデジタル・ビジネス投資は、まったく新しい市場やビジネスモデルの創造であるため、経営者による賭けの側面があり、価値が明確になるまで実験を繰り返すことになるため、デジタル・ビジネス予算は、従来の予算とはまったく別に考えるべきだと述べた。

優秀な人材はITリーダー自ら確保せよ

ガートナー ソーシング & 戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017

最後に登場したのは、バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの足立 祐子だ。テーマは「人材の視点で見直すソーシング戦略」である。

ソーシング戦略とIT人材戦略は密接な関係にあるが、両者を結びつけて施策を立案・実行しているIT部門は少ない。そこで足立は、現在と将来のIT人材の状況を俯瞰しながら、内製およびアウトソーシングで構成するソーシング戦略見直しのポイントを解説した。

まず、2007年と2017年のデータを比較し、10年前は人材不足のためにアウトソーシングをしていたが、2017年では9割もの企業が人材不足と回答している状況を紹介し、人材不足解消のためのアウトソーシングが新たな人材不足を引き起こしていると指摘した。日本企業はアウトソーシングによって、タスクの切り離しによる技術知識とスキルの空洞化、アウトソーシングを広げたことによる全体感をもった人材の喪失、人材育成の場の消滅、新たに獲得すべきスキルと放棄すべきスキルのバランスの悪さの4つの問題があるものの、どれもIT部門が行動すれば変えられる問題だと述べた。

ソーシング戦略に盛り込むべき人材の視点として、現在と将来の社内組織構造をあげ、バイモーダルITに取り組み、モード2の組織の編成することが大事だと語った。「モード1は堅物、モード2は変人の集まり」というイメージがあるが、それは大きな間違いであり、ビジネス・プロフェッショナルとしての資質が何よりも問われると強調した。

ソーシングに盛り込む人材の視点として、ソーシング選択肢の多様化があるとし、人材計画との連携とバイモーダル・アプローチとの親和性を検討すべきだと語り、さらに優秀な人材確保はITリーダー自らが探すべきだと述べ、プロフェッショナルSNSを使った採用活動、技術者のコミュニティへの参加によって目星をつけるなど、先行企業の成功パターンを次々と紹介し、最後にガートナーの提言を4つ述べてサミットを締めくくった。

ガートナー ソーシング & 戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017
ソーシング&ベンダー管理をデジタル・ビジネスのコアに据えよ
2017年6月5日(月)・6日(火) ガートナー ジャパン/東京コンファレンスセンター・品川

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