開催レポート

ITインフラ担当者はコスト削減のための要員ではなくクリエイターだ

ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017

2017年4月26日(水)~28日(金)の3日間、東京コンファレンスセンター・品川で『ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017』が開催された。 デジタル・ビジネスやデジタル・トランスフォーメーションが現実になりつつある今、それらを実行するためには、戦略の進め方、新たなカルチャーの理解と振る舞い、テクノロジを駆使する新たなスキルが求められることを認識し、具体的なアクションを立案する必要がある。

本サミットでは、CIO、ITインフラ・リーダーが認識すべき「テクノロジ・トレンド」「カルチャー」「スキル」について議論した。そのなかで、印象的な4つの講演を紹介する。

現段階の自分たちのリアリティを把握せよ

ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017

「どの企業も『何をすればいいのか』と悩んでいる。スタートを切るためにまずすべきことは、今の自分たちの現時点の“リアリティ”をしっかりと捉えることだ──」
初日のオープニング基調講演に登壇したのは、バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀 忠明だ。テーマは「未来志向:2020年に向けたテクノロジ、ビジネス、人材のシナリオ」である。

亦賀は今のリアリティをしっかりと見つめ、それを共有して新しいリアリティにしていくことの重要性に言及し、現在のデジタル化で起こっていることの共通点として「速い、安い、より満足」があると指摘。多くの人がよいと思えば破壊が起こると語り、例としてレジなしリアル店舗の『Amazon Go』を紹介した。

それを実現するために必須なものとして、エコシステムやプラットフォーム戦略を考える人材とデバイスがあり、デバイスはそれぞれを別々に考えるのではなく、クラウド、モバイル、ソーシャル、インフォメーション、IoTやAIといったテクノロジを融合することが肝要だと述べた。

そして、亦賀が講演で最も強調したのが人材の重要性。自助努力に任せれば人材は育つという考えは、急速かつ大きな変化の中では成り立たない。「人材育成」というレベルではなく、オンライン講座、認定試験の受験など、積極的に「人材投資」をして早期にレベルアップを図る必要性があるとした。

また人材採用の際も、優秀な人材であれば高いスキルを適切に評価し、欧米のようにそれなりの対価を払う「ハイスキル・ハイリターン」の考え方をもたないとデジタル・ビジネスは推進できないと述べた。
少し前まではエンジニアは「作業者」だったが、これからは「クリエイター」であると語り、自分たちの意識を180度変えようと呼びかけた。

水平転換できる多面的な人材を

ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017

初日の午後に登壇したのが、 バイス プレジデント 兼 最上級アナリストのデーブ・ラッセルだ。テーマは「テクノロジ・トレンドのトップ10:ITインフラストラクチャ&オペレーションへの影響」である。

ラッセルは、今後5年間において、IT部門によるビジネス部門へのサービス提供に直接的な影響を及ぼす、社会、ビジネス、テクノロジ関連の10のトレンドを紹介。これらのトレンドがどう出現し、IT運用にどのような連鎖的な影響をもたらすかをIT部門が理解していないと、IT戦略、プランニング、運用は甚大な影響を被ることになると述べた。

まずトレンドとして取り上げたのはデータセンター。従来はオンプレミスによるものがほとんどだったが、今後はオフプレミス、クラウド・プロバイダーが増加すると予測。しかしオンプレミスは完全になくなるわけではなくあくまでも共存が続くとし、作業が複雑化するなか、ビジネス部門に対してより迅速に価値を提供できるかがカギになると指摘した。

また、「ビジネス部門主導のIT利用」についても言及。企業のIT支出の少なくとも29%はIT組織予算外で発生している事実を示し、IT部門が遅々として進まないことからビジネス部門が先手を打った可能性があると述べ、ビジネス部門とパートナーシップを組み、ビジネス部門を支援し、IT部門として積極的に新しい知識や情報を提供することが肝要だと語った。

そして、複数のトレンドを次々と紹介したあと、最後に「新たな役割を担うIT部門」について触れ、一つの分野に特化した垂直的な知識も重要だが、水平転換できる多面的な領域にまたがって理解できる人材が求められていると強調し、5つのガートナーの提言を示し締めくくった。

AIの誤解を解き、まずは小さなことから始めよう

「人工知能(AI)は今、大きな誤解を生んでいる──」 2日目の一番手で登場したのは、オープニング基調講演でも講演した亦賀 忠明。テーマは「人工知能のリアリティ」だ。

亦賀は、2020年までにAIに関する誤解を継続する企業の90%が、デジタル・ビジネスの推進で頓挫すると語り、「すごい賢いAIがすでに存在する」「AIを導入すればすぐに効果が出る」「教師なし学習は教師が不要なので、こちらのほうがよい」「誰でも使えるAIがある」など、AIに関する数多くの誤解を指摘。これからの誤解を解くことでスタート地点に立てると語り、最初から過剰な期待はせず、シンプルな目標を設定すべきだと説いた。

ただし、AIエンジンはOSに相当するため、AIで何ができるかを問うことは、OSで何ができるかを問うことと同義であり、AIで本当に何ができるのかは悩ましい問題だと言及。 AIのスタートとして、自分で試行することを求め、トレーニングを受け、さらにAIの専門知識やテクノロジをもった企業との取引を検討することを推奨。しかし、決して丸投げにするのではなく、「最初から完璧を求めない」「事例づくりに終わらない」「すぐに諦めない」「儲かるのか、できるのかを言わない」「1年は研究期間と割り切る」「専任者をアサインする」などの数多くの注意事項を紹介。

さらに、それでも行き詰まったら、膨大な紙の処理や待ち行列など目の前で起こっている「何とかならないか」に立ち返るべきだと強調。手作業で1日8時間かかるきゅうりの仕分けをAIで自動化した例を示し、わかりやすい目標を、わかりやすいアプローチで、すぐに手に入るものを使いながら小さく始めてみるのも一案だと語った。

まだまだ解決されていない問題を新発想で乗り越えよう

ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017

クロージング基調講演でサミットの最後を飾ったのは、「デジタル時代の幕開けにあなたは何をすべきか」をテーマに講演した、バイス プレジデントの池田 武史だ。池田はサミット全体を振り返りつつ、これから本格的な幕開けとなるデジタル時代に向けて何が起こりうるのか、その変化に対して留意すべき点は何なのかについて語った。

まず、IT部門がこれから直面する壁は、従来は従業員を対象としたビジネスの最適化や効率化だったが、今は顧客やパートナーにもフォーカスした新たなエコシステムの構築の必要性が迫られていると指摘。

デジタル時代のチャンスは、常識や慣習、ルールを疑い、あらゆるモノやコトがつながった世界を「想像」し、新しい自分たちを「創造」することだと力説。今のそれなりに幸せな生活をあえて疑ってみることが重要だと説いた。
我々の生活を見回してみても、通勤混雑が相変わらず解消されていないこと、日本の食品ロスは世界の全食料援助量の2倍にもなることなど、解決すべき問題は山積しているとし、このような問題を解決するには従来の大量生産型では不十分だと言及。

膨大なデータとそれらを用いた分析と予測を圧倒的な速さで実現し、組織よりフラットにつながったパートナー関係を求めることで、新しい秩序に基づいた新世界/新世界基準が生まれるはずだと述べた。そして、自分自身のスキルの棚卸し、さらにデジタル時代に解決していきたいテーマを探索していこうと語りかけた。

ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017
@ the Core of Change
2017年4月26日(水)- 28日(金)  東京コンファレンスセンター・品川

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