開催レポート

ITリーダー自ら舵を握り、デジタル・トランスフォーメーションの荒波を乗り越えよ

ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018

2018年3月15(木)‐16日(金)の2日間、東京コンファレンスセンター品川にて、『ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018』が開催された。テーマは、「デジタル・トランスフォーメーション実現の鍵としてのアプリケーション戦略」である。

今、日本企業のデジタル・トランスフォーメーション(デジタル・ビジネス推進のための変革)への取り組みの本気度が増しつつある。その実現には、顧客、モノ、エコシステム、データ、社内システムのつながりからなる、デジタル・プラットフォームの構築が欠かせない。そして、その鍵となるのが、エンタプライズ・アプリケーションの変革だ。その変革には、ビジネス・ニーズに迅速に対応できる仕組みが求められる。
ここでは、デジタル・トランスフォーメーション実現にヒントを与える、4つの講演を紹介する。

企業の価値はどれだけビジネス・エコシステムに参加しているかで決まる

ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018

バイス プレジデント
デニス・ゴーハン

「ビジネス・エコシステムにまったく投資しない、という選択肢はない。投資しないことは企業に最悪の結果をもたらすことになる──」
1日目のオープニング基調講演に登壇したのは、バイス プレジデントのデニス・ゴーハン。テーマは「デジタル・プラットフォームを構築してビジネス・エコシステムに投資せよ」である。

冒頭ゴーハンは、企業の価値はどれだけビジネス・エコシステムに参加しているかで決まるようになると語り、「今後2年間でパートナーが2倍以上になり、今後3年間で自社に属する業界以外の業界に関与する企業は3倍に増える」など4つの予想を示し、ビジネス・エコシステムは今後さらに複雑化すると指摘した。

デジタル・ビジネス・エコシステムは次の4つの力から形成されていると述べ、1つ目に相互接続を挙げた。優れたパフォーマンスを挙げている企業の79%がすでにビジネス・エコシステムに参加しており、将来的には70億人が接続すると予測。車からレストランの予約ができたりと、“数多くのメーカー”とつながることで価値のある車になっているコネクテッドカーの例を示した。 2つ目はプラットフォーム。2018年までにEAイニシアティブの50%がデジタル・ビジネス・プラットフォーム戦略の策定と実現にフォーカスするようになると語り、さらに2つの力(情報、コラボレーション)を紹介した。

次にエコシステム戦略に言及。「リーダー」「ニッチプレイヤー」「参加者」「破壊者」の4つの戦略があるが、多くの企業がビジネス全体にまたがる複数の戦略を追求すると述べた。
そしてその際に重要となるのは、オープン性、参加主体の決定、どの企業と連携するのかというリレーションシップなど、計6つのポイントを示した。

最後に、ビジネス・エコシステム戦略をサポートするために、CIOとITリーダーが評価しなければいけないデジタル・プラットフォームのビジネスモデルとテクノロジに触れ、ビジネスモデルは4つあると力説。1つはコラボレーションで価値をつくること、2つ目はコネクテッドカーに代表されるオーケストレーション、3つ目はプラットフォームなどのクリエーション。4つ目は提供者と利用者を結びつけるマッチングがあると語り、ビジネスモデルがわかれば必要なケイパビリティが見え、それを実現するためのテクノロジを考えようと呼びかけた。

デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォームに欠かせないAPI

ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018

バイス プレジデント
パオロ・マリンベルノ

2日目の午後、「APIプラットフォームとAPIエコシステムシステム構築についてCIOとITリーダーが知っておくべき10項目」について講演を行ったのは、バイス プレジデントのパオロ・マリンベルノだ。

マリンベルノはまずAPIを使用すべき理由について言及。APIは現代のアプリケーション・アーキテクチャの中心であらゆる場所にあり、かつ、デジタル・ビジネス・プラットフォームに不可欠だとし、バイモーダルを実現するにもAPIが必要だと語った。
次に、APIプログラムの推進の仕方について述べ、消費者が求めるAPIを提供するためにも「APIプロダクト・マネージャー」という役割が必要だと強調。デジタル化の先進企業では42%がこの役割を設置している一方、デジタル化に遅れた企業で設置しているのはわずか6%でしかない現状を示した。

APIはITシステムへと続く扉だが、よいドアにはよい鍵がなければいけないとし、適切なセキュリティの必要性を説き、セキュリティが適用されるべき場所は、「アプリ、サービスやモノ」と「内部API」の間にあるAPI仲介レイヤだと述べた。また、ユーザーが増えてくると数年後には開発しなければならないものが増えるため、独自のAPI管理を構築しないことを推奨した。

APIの売り込み方としては、低所得者の多い地域に高級ショッピングモールをつくって、人が入らず9か月で閉鎖された例を示し、APIを公開しても利用してもらえるとは限らず、自社でAPIを使いたいと思ってもらえるかが肝要だと指摘。既存の無料のAPIを使って収益化することも可能で、CIOが目的を明確に定義すれば、ハッカソンでもイノベーションを推進することができるとした。
APIは今後、APIの公開よりも利用することのほうが一般的になるとし、最後にCIOのための行動計画を大きく3つ示し、降壇した。

すごい勢いで進化するAI。ただし進化は慎重にせよ

ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018

バイス プレジデント
マーク・ドライバー

「人間がどう思考しどう記憶するかの仕組みはすべてわかっていない。そのためAIも決して人間と同じ思考や発想をしているわけではない──」

「AI時代のアプリケーション開発」をテーマに講演したのは、バイス プレジデントのマーク・ドライバーだ。
ドライバーはAIは50年も前からあるが、それがなぜ今AIなのかの理由として、1つは、マルチコア、クラウドベースのコンピュータプラットフォームが台頭した結果、無限大の処理能力が提供できるようになったこと。もう1つが、ビッグデータとIoTの登場で、AIが無限大にデータを吸収できるようになったことが大きいと語った。

次に、AIを最大限活用するために必要になる開発者のスキル、プロセス、ツールについて述べ、システムのプログラミングよりトレーニングが重要であり、2020年までに、企業の20%がニューラル・ネットワークなどの機械学習の監視・指導を専任で行う担当者を雇用するようになると述べた。

機械学習アルゴリズムと問題解決のアプローチ例として、画像認識などの「探索的」、気象から売り上げを予測するなどの「予測的」、トレーニング・データに基づく「教師あり学習」などがあるが、「教師なし学習」はまだ危険な段階にあるとし、慎重な対応を求めた。
ドライバーは、現在登場しつつあるAIを次々と紹介。そのなかで、エレベーターの修理で壊れた部品を撮影するとAIがそれを画像認識し、部品を特定して自動的に発注できるといったことができるようになる例を紹介。さらに、センチメントアルゴリズムにも触れ、「まあまあ」というプラスにもマイナスにも判断できる言葉でも、皮肉で言っているのか、好きで言っているのかAIのアルゴリズムによって判断でき、会社の評価を知るためにも使えると語った。
最後に今後のAIに言及し、スティーヴン・ホーキング博士の「完全な人工知能の開発は、人類の終焉を意味する可能性がある」の言葉に触れ、AIはパワフルだが、慎重に進化させるべきだと述べ、ITリーダーの行動計画を示して講演を終えた。

「関心がある」から卒業し、今すぐにでもデジタル・ビジネスを推進せよ

ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018

リサーチ ディレクター
片山 治利

サミットの最後を飾るクロージング基調講演に登壇したのは、本サミットのチェアであるリサーチ ディレクターの片山 治利。テーマは「アプリケーション・リーダーはデジタル・トランスフォーメーション推進の舵を握れ」である。

片山はサミット全体を振り返ったあと、後半から本題に入った。ガートナーが行った調査結果を示し、デジタル・ビジネスに関心があるものの開始する予定がない社員1,000人以上の企業が38.5%もあることを指摘。関心がある状態から卒業して検討を開始しようと強く呼びかけ、関心をもっているだけではデジタル破壊者が現れたときになす術がないと警鐘を鳴らした。
デジタル・ビジネスを推進するには、「経営層などへの理解」「テーマ探索」「稼働への準備」の3つのハードルがあり、テーマ探索は少数精鋭チームの編成や実証実験と評価によって乗り越えられるとした。

デジタル・ビジネスの意味と目的は、新事業による売上拡大だけでなく、現行ビジネスで考えることも重要だと語り、現に本業にデジタル・ビジネスを取り入れることで劇的に成長している企業の例を示した。一方で、従業員の満足度のためにデジタル・ビジネスに取り組もうとしている企業が1.5%しかない現状について触れ、荒波に舟を漕いで出るときに水夫の士気が低かったらうまくいかないと述べ、従業員の幸せも考えようと行動を促した。

デジタル・トランスフォーメーションの課題として人材を取り上げ、バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの足立が「日本のIT人材展望2018」で話した通り、バイモーダルのモード2の人材発掘が大きな鍵になると語った。モード1の人材をトレーニングしてモード2にもっていくのは現実的でないとし、従業員の常日頃の振る舞いを観察して適性を見極めること、さらにベテランの従業員も十分候補になり得ると述べた。
デジタル・ビジネスは今、期待のピークであり、これから幻滅期(荒波)に向かう状況から、「ITリーダーがデジタル・ビジネスを主導する意識をもって自ら舵をもち、荒波を乗り切っていこう」と会場に語りかけ、講演を締めくくった。

ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018
デジタル・トランスフォーメーション実現の鍵としてのアプリケーション戦略
2018年3月15日(木)・16日(金)  東京コンファレンスセンター・品川

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